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失われる伝統文化、子どもたちの祭り
ダム建設進む虹里村、秋祭りの中止決定
1996年9月1日 10:15 社会部・地方
県北部の虹里村で長年受け継がれてきた秋の伝統行事が、今年は開催されないことが分かった。
村では毎年秋、収穫を祝うと同時に子どもたちが村の山の神の使いに扮し、
踊りながら集落の端から端までを練り歩く祭りが行われてきたが
今年はダム建設工事の影響などを理由に、村の会合で中止が決定された。
村関係者によると、近年進められているダム建設に伴い工事車両の往来が増加しており、
安全面への懸念が強まっていた。
さらに、工事をめぐる住民同士の意見の対立も激しくなっており、
「子どもたちを安心して参加させられる状況ではない」
との声が相次いだという。
虹里村では約五十年ほど前から現在にかけて村の外から移り住んだ住民が多く、
村民のおよそ半数を占めている。
一方で、祭りは古くから村に暮らしてきた家々が中心となって継承してきた行事であり、
新旧住民の間で参加への温度差も指摘されていた。
会合では
「子どもたちの参加が見込めない以上、祭りの継続は難しいのではないか」
とする意見が多く出され、今年の中止が決まった。
虹里村はその名の通り「虹の橋のたもと」に由来する地名を持ち、
村に伝わる言い伝えでは、この地で育った者が亡くなるとその骨は虹色に輝くとされてきた。
また、村の山にはこの土地にしか自生しないとされる虹色の菫「虹色スミレ」が咲き、
国内のみならず海外の園芸愛好家やコレクターの間でも知られている。
ダム建設によって、これらの自然や文化の存続を危ぶむ声も少なくない。
村の様子を長年撮影してきた地元の写真家は、
「祭りは単なる行事ではなく、子どもたちが村の歴史や自然と向き合う大切な機会だった。失われるものの大きさを、もっと多くの人に知ってほしい」
と語る。
ダム建設が進む中、虹里村では地域の安全や発展と引き換えに、
守られてきた風景や文化が静かに姿を消しつつある。
※本記事は過去に掲載された記事のアーカイブです。
内容は掲載当時のものです。
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